エミッタ接地回路の計算、ハイパスフィルタ、ゲイン、増幅、バイアス電圧、ベース電位など

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更新日 2017-09-02 | 作成日 2008-01-12

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エミッタ接地回路の基礎


お待たせいたしました。いよいよエミッタ接地増幅回路の計算です。ここからが回路の本当の楽しいところなのでじっくり勉強していきましょう!!

1、基本エミッタ接地回路計算

前節で勉強したエミッタ接地回路にSin波信号を入力しどういう振る舞いをするか考えていきましょう。前節で用いたエミッタ接地回路を使って考えていきます。まずは、このVINにSin波の信号をのせて増幅することが今回の課題です。ではどうやって抵抗分割されたベース電位にSin波をのせればよいのでしょうか?

基本エミッタ接地回路
Fig.1 基本エミッタ接地バイアス回路

2、ベース電位にSin波をのせる方法

バイアスされたベース端子に信号をのせる方法を考えていきます。信号をのせるためには、Sin波など信号を通過する素子をつなげばよいのです。ここで真っ先に思いつくのはコンデンサではないでしょうか?コンデンサはDC成分はカットしますが、周波数のある程度高いAC成分は通過する性質があります。では、このベース電位にコンデンサをつなぐとどうなるかを考えていきましょう。

エミッタ接地回路のバイアスポイントにコンデンサを接続し、Vin信号を入力してみましょう。これでハイパスフィルタの出来上がりです。ハイパスフィルタの最も簡単な形式は、以下のFig.2の形式です。

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Fig.2  ハイパスフィルタの基本形

このハイパスフィルタをエミッタ接地回路に応用していきます。Fig.1の回路で考えると、VINにコンデンサを接続するので、コンデンサは、次段のベース端子のインピーダンス成分、つまり、R1、R3とベース端子の入力インピーダンスによりハイパスフィルタが構成されます。このハイパスフィルタを構成することにより、増幅したい入力信号のDC成分だけを取り除いてやることができ、エミッタ接地回路のベース端子にはAC成分だけ入力できるのです。

この回路のハイパスフィルタのカットオフ周波数はトランジスタのベース電流を無視すると簡易的にfp=1/2πC(R1//R3)で計算できます。

3、エミッタ接地増幅器の計算

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Fig.3 基本エミッタ接地回路

この回路で実際にバイアス電圧やゲインなどを計算してみましょう。

(1) ベース端子の電圧計算

Vbase= 5V×1.16k/(8.84k+1.16k)=0.58v

(2) ゲインを求めてみます。

今回の回路はエミッタ側に抵抗がないので、エミッタ電流が決定できません。代わりに出力端子が電源電圧の1/2で振れるとすると仮定してコレクタ電流を決定しましょう。

Ic=2.5v ÷ 20k =125uA

次に出力インピーダンスroを求め、
ゲインを計算します。
β=120 Va=100とすると

roQ1=Va/Ic=100/125uA=800kΩ

ゲインの計算式は

Av=-gm(roQ1//R2)
=-(125uA/0.026)
×(800kΩ//20kΩ)
= - 93.75倍 (39.4dB)

(3) ハイパスフィルタのfp周波数

fp=1/2πC1(R1//R3)
=1/2π10u(8.84k//1.16k)
=15.5Hz

カットオフ周波数が15.5Hzなので入力信号1kHzでは問題なく信号を通過出来ます。

4、Sin波入力時の応答

実際にFig.1の回路でSin波を入力し、増幅するかを調べたいのですが、ハイパスフィルタの効果を調べるためにちょっと意地悪してみましょう。わざと、信号のDCレベルとバイアスポイントをずらした信号を入力してみます。

本来はVinにDCバイアス0.58Vで振幅1mVのSin波を入力すべきですが、わざとDCレベルをずらした信号、例えばVinにDCバイアス2.5Vで振幅1mVのSin波を入力してみます。

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Fig.4 Fig.3のSim結果

Vinは2.5Vを中心に1mV変化したSin波を入力しましたが、C1により信号のDC成分がカットされ、Vbaseの電位はトランジスタにバイアスされた約0.579Vの電圧を中心に約1mVの振幅になっています。また、出力電圧は約2.85Vを中心に約80mVに出力は増幅されました。以上より、ハイパスフィルタのおかげで入力信号のDCレベルに関係なく増幅器として動かすことが出来ました。

5、エミッタ接地回路の周波数特性

次にFig.3の回路のAC解析(周波数解析)を行います。
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Fig.5 Fig.3のAC解析Sim結果

Fig.5から分かりますように、16.1Hz以下の低周波ではハイパスフィルタのカットオフ以下なので周波数が低くなるにつれ信号レベルは減衰し、DC成分の振幅は小さくなっています。また、逆にカットオフ周波数以上では信号は減衰せずに出力されていることがわかります。また、更に高い周波数になると今度はトランジスタ回路のカットオフ周波数で出力信号は減衰していきます。(エミッタ接地回路単体も簡易的には1次のカットオフを持つ周波数特性だからです。)
これがFig.3の基本エミッタ回路の周波数特性です。では次に先程計算した結果と上記シミュレーションの結果を比較してみましょう。

パラメータ        計算      Sim値
ゲイン           39.4dB     38.5dB
ハイパスフィルタfc  15.5Hz      16.1Hz

上記手計算ではベース電流の影響は無視したり、コレクタ電流も簡易計算しているので若干の誤差はありますが、かなり計算結果と近い値が出ました。簡易的な手計算でもここまでできるのです。

6、まとめと注意点

上記回路はディスクリートトランジスタで構成される回路でよく用いられる回路です。実際、半導体回路で用いるにはμFオーダーのカップリングコンデンサが必要になるのでIC内部では用いることが出来ません。(ICに内蔵できるコンデンサはせいぜい数十pFレベル)あくまでエミッタ接地回路の増幅の勉強のために例としてあげてみました。でも実際、回路の考え方は同じなので、ここで用いた考え方は最低限理解しておきましょう。



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