カスコード回路+エミッタフォロアの応用回路の考え方
前節で、エミッタフォロア回路やベース接地回路、カスコード回路の基本を勉強してきましたが、今回はそれを組み合わせた回路について勉強しましょう。ここで用いる考え方は、オペアンプ回路など増幅器を計算する基礎にもなるので十分理解しておきましょう。ここで用いる考え方を使えば、さまざまな基本回路の計算へ、幅広く展開出来るようになります。
1、カスコード回路+エミッタフォロア回路とは!?
Fig.1 カスコード+エミフォロ回路例
Fig.1の構成はカスコード回路とエミッタフォロア回路を組み合わせた回路です。2段構成になっており、一段目はカスコード接続回路です。ここで信号を増幅します。二段目はエミッタフォロア回路です。エミッタフォロア回路を用いることにより、出力のインピーダンスを下げ、能力をもたせると共に、負荷によらず、一段目のゲインを極力低下させることなく出力する役割ができます。つまり、増幅器の理想の形です。
回路図中のQ3、Q6、Q7、Q10はカレントミラーです。Q7に流れる電流と同じ電流をQ3、Q6、Q10に供給します。この回路は、Q4、Q8のコレクタ電流、Q1のエミッタ電流を決定する定電流源として動作します。また、D1、D2、D3とQ9はベース接地回路のベースバイアス電圧用のバイアス回路です。Q8のベースに約1.8VのDC電圧を供給します。このバイアス回路はいろいろな構成が出来ますが、今回は定電流とダイオードで構成しました。
2、ゲインの基本式の復習!!
カスコード回路のゲイン計算式の基本形は
Av=Vout/Vin=-gm×(R//βro)
エミッタフォロア回路のゲイン計算式の基本形は
Av=Vout/Vin=gmRout/(1+gmRout)
ここでは紙面の都合上、これらの式の導出はしませんが、
アナログ集積回路設計技術〈上〉
などで詳しく説明されています。
3、一段目カスコード回路のゲインは!?
Fig.1 カスコード+エミフォロ回路例
Fig.1の回路を上記式を使って計算していきましょう。一段目カスコード回路のゲインはQ4のgm4とVc1点のインピーダンスの掛け算です。Vc1点のインピーダンスは定電流Q2の出力抵抗ro2とQ8側からGNDに対して見えるインピーダンスβro8と次段Q1の入力インピーダンスrin1で決まります。順にみていきましょう。
エミッタフォロア回路の入力インピーダンスの基本形は
Zin=rπ+Rout(1+β)
です。
rπはエミフォロとなるトランジスタの入力抵抗で、Routはエミッタにぶら下がるインピーダンスです。今回の回路の場合、rπは、Q1の入力インピーダンスrπ1です。RoutはQ1のエミッタ側のインピーダンスなので、定電流Q3の出力抵抗ro3、負荷抵抗R2の並列で決まります。従ってrin1は
rin1=rπ1+(ro3//R2)×(1+βnpn)
になります。
ここでは紙面の都合上、この式の導出はしませんが、
アナログ集積回路設計技術〈上〉
などで詳しく説明されています。
以上より、一段目エミッタ接地回路のゲインは
Av=-gm4×(βnpn・ro8//ro2//rin1)
となります。
4、二段目エミッタフォロア回路のゲインは!?
Fig.1 カスコード+エミフォロ回路例
二段目エミッタフォロア回路のゲインを考えます。この回路の基本式は
Av=Vout/Vin=gmRout/(1+gmRout)
です。
この基本式をFig.1に適用するとgmはQ1のgm1となり、RoutはQ1のエミッタにぶら下がるインピーダンスなので、エミッタフォロア回路の出力定電流Q3の出力抵抗ro3、負荷抵抗R2の並列で決まります。従ってRoutは
Rout=ro3//R2
になります。以上より、二段目エミッタフォロア回路のゲインは
Av=Vout/Vin=gm1Rout/(1+gm1Rout)
となります。
複雑に見える回路もすべて基本コンポーネントの組み合わせにより構成されているので分解していけば計算できます。やはり基本は重要ですよね?。
等価回路や回路の計算方法を詳しく勉強したい場合は、
アナログ集積回路設計技術〈上〉
などが詳しいです。
引き続きカスコード回路応用例の具体的計算をしてみる!!
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