1、具体的な数値計算!!
具体的に数値を入れて計算していきましょう。
Fig.1 カスコード+エミフォロ回路例
計算条件
電源電圧=5v
PNP:βpnp=175、VApnp=100
NPN:βnpn=200、VAnpn=100
一段目カスコード回路のゲインは前節の結果より
Av=-gm4×(βnpn・ro8//ro2//rin1)
rin1=rπ1+(ro3//R2)×(1+βnpn)
となります。
ゲイン計算を行うためには、Q4、Q8やQ1などのバイアス電流の値が必要です。
順に確認していきましょう。
<Q4、Q8とQ1のバイアス電流について>
Q4、Q8のコレクタ電流はカレントミラーQ2から供給されます。ただし、エミッタ接地回路+エミッタフォロア回路の組み合わせの場合注意が必要です。なぜなら、エミッタフォロア回路の出力電流が大きい場合、エミッタフォロア回路のベース電流の影響が出るからです。
例えば、Voutが電源電圧の1/2を中心に出力信号が振れると仮定すると、今回の場合、その中心電圧はVout=2.5vです。次に、この出力で消費する電流を考えると、R2=1kΩなので、この抵抗に流れる電流は、2.5v/1kΩ=2.5mAです。また、カレントミラーQ3は100uA流出するので、IoutのトータルはIout=2.5mA+100uA=2.6mAになります。このIoutはQ1のエミッタから供給されます。この場合npnトランジスタのβを200とすると、Q1のベース電流は、2.6mA÷200=13uA流れることになります。以上より、このエミッタフォロア回路Q1のベース電流を考慮すると、Q4、Q8のコレクタ電流はIc4=100uA-13uA=87uAとなります。
Fig.1 カスコード+エミフォロ回路例
では早速各パラメータを計算していきましょう。
Q4、Q8のコレクタ電流Ic4=87uA、Q1のエミッタ電流Iout=2.6mA、
カレントミラーQ2、Q3で供給される電流をIc=100uAとすると
gm4=Ic4/0.026=87uA/0.026=3.35m
ro2=VApnp/Ic=100/100u=1M
ro8=VAnpn/Ic4=100/87u=1.15M
βnpn×ro8=200×1.15M=230M
rπ1=βnpn×re1=200×0.026/2.6m=2k
gm1=Iout/0.026=2.6m/0.026=0.1
ro3=VAnpn/Ic=100/100u=1M
rin1=rπ1+(ro3//R2)×(1+βnpn)
=2k+(1k)×(1+200)=203k
以上の結果より
Av=-gm4×(βnpn・ro8//ro2//rin1)
=-3.35m×(230M//1M//203k)=-564.9⇒-55.04dB
2、二段目エミッタフォロア回路のゲインは!?
Fig.1 カスコード+エミフォロ回路例
二段目エミッタフォロア回路のゲインは先程の結果より
Av=Vout/Vin=gm1Rout/(1+gm1Rout)
ただし、Rout=ro3//R2
となります。では順に考えていきます。
Rout=ro3//R2=1M//1k=1kΩ
gm1Rout=0.1×1kΩ=100
Av=Vout/Vin=gm1Rout/(1+gm1Rout)=100/(1+100)=0.99=-0.09dB
以上よりトータルのゲインは
一段目のゲイン+二段目のゲイン=-564.9×0.99=-559.3⇒-54.95dB
3、手計算とSim結果との比較
Fig.2 カスコード+エミフォロ回路例Sim結果
Fig.2の回路のSim結果を示します。
計算結果 Sim結果
一段目のゲイン -55.04dB -55.52dB
二段目のゲイン -0.09dB -0.12dB
トータルゲイン -54.95dB -55.4dB
以上より、計算値とSim結果で0.8%の誤差でかなり近い値になります。複雑に見える回路もすべて基本コンポーネントの組み合わせにより構成されているので分解していけば計算できます。やはり基本は重要ですよね?。
等価回路や回路の計算方法を詳しく勉強したい場合は、
アナログ集積回路設計技術〈上〉
などが詳しいです。
引き続きその他バイポーラ回路を勉強してみる!!
関連書籍で更に勉強してみる。
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