差動増幅器回路の基礎2
1、差動増幅器回路の考え方
Fig.1 よく使う差動増幅器の
基本回路構成
入力電圧の差分電圧ΔVinにより、Itail電流をQ1、Q2に振り分けますが、このi1とi2の差分を取り出した電流を今度はioutにシングルエンド変換する過程を考えましょう。
i3とi4はカレントミラー回路を構成しているのでi3≒i4となります。
また、Itail=i1+i2です。
基本的な動作を考えると、Vin1とVin2の電圧差によりi1とi2が変化し、i1=i3なのでカレントミラーにより、i1=i3=i4となるので、ioutはiout=i4-i2となります。入力の電圧差が±ioutとなり出力されます。この考え方が基本です。
Vin1<Vin2のとき
ioutは-Itailとなり電流を引き込みます。Voutに負荷がつながっていれば、Voutの電位は下がり論理で考えるとVout=Lとなります。
Vin1>Vin2のとき
ioutは+itailとなり電流を流出するため、Voutに負荷がつながっていればVoutの電位は上がる方向となり論理で考えるとVout=Hとなります。
以上よりこの回路が比較器として使用できることが確認できました。
2、差分信号の考え方
Fig.1 よく使う差動増幅器の
基本回路構成
<AC動作>
差動増幅器への入力信号は同相信号と差動信号がそれぞれ重畳されたものです。Vin1とVin2のDCバイアス電圧は同じでなければ、信号の差分を取り出すことは出来ません。従って、Vin1とVin2の同じDCバイアス電圧が入力されそのバイアスポイントの上でAC成分のみが変化すると考えると分かりやすいでしょう。ここで入力信号をつぎのように定義します。
Vin1=Vcom+Vdiff1/2
Vin2=Vcom-Vdiff2/2
Vcom :同相信号成分
Vdiff :差分信号成分
次に差分信号について考えていきます。エミッタ共通部は電位が動かないのでAC接地とみなすことが出来ます。この考え方を用いるとエミッタ接地回路と同じ考え方で小信号解析が出来ます。差動回路を考える上で大前提は、i1=i2とおいて解析することです。差分信号だけで考えると、Q1のコレクタ電流はIc=gmVinと表せるのでQ1のコレクタ電流は、
i1= + gm1・Vdiff1/2
i2= - gm2・Vdiff2/2
また、i1=i3=i4の関係より
Δiout=i1-i2 = gm1・Vdiff
となります。この電流変化が出力インピーダンスのro2//ro4で電圧に変換されるのでゲインは
Avdiff= - gm1・(ro2//ro4)
となります。
出力インピーダンスroから
求めます。Vanpn=Vapnp=100vとすると
roQ2=Q4=Va/Ic=100/10uA=10MΩ
ゲインの計算式はQ2側を見たインピーダンスは十分高いので
Av=-gmQ1×(ro2//ro4//R6)
=-(10uA/0.026)×(10M//10M//130k)
= - 48.73(33.76.dB)
ここでは紙面の都合上、これらの式の導出はしませんが、
アナログ集積回路設計技術〈上〉
などが詳しいです。
4、まとめ
以上差動増幅回路の基本動作を考えてきましたが、
これ以外の注意点を簡単にまとめておきましょう。
1、差動入力の同相入力範囲に気を付ける
2、ミスマッチが生じると差動対にオフセットが付く
Q1、Q2のレイアウトやデバイス的なペア性のズレ
Q1、Q2のコレクタ電位のズレ
Q1、Q2のコレクタ電流のズレ
Q1、Q2のアーリー効果によるズレ
以上がミスマッチの原因例です。
3、差動増幅器の次段は高インピーダンス回路で受けなければ、
ゲインが減少する。
この回路はオペアンプ回路、コンパレータ回路などさまざまな場面で
用いられるため、十分理解しておきましょう。
引き続き、ダーリントン接続回路を勉強する!!
その他バイポーラ回路を勉強してみる
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