エミッタ接地回路のモデリングと等価回路
ここではエミッタ接地回路やトランジスタ回路を計算する場合に必要な計算式、パラメータ、等価回路について説明します。トランジスタ回路を計算する上で必ず必要な数式なので必ず理解しておきましょう。
1、トランジスタ回路の数式化の重要性
実際にトランジスタ回路を解析したり設計する場合、トランジスタをモデリングし、それに基づいたパラメータを数式化することにより各種計算を行います。コンピュータによるSpiceなどのシミュレーションも、複雑にモデル化されたパラメータに従って、コンピュータが詳細の計算を行います。従って、トランジスタ回路を手計算するためにはまず、トランジスタの簡易モデル化という作業が必要です。
モデル化というと難しく聞こえますが、トランジスタの電流など、各端子の変化を擬似的に抵抗や各関係式に置き換えることにより、トランジスタの動作を等価的に表現し、それを元に計算を行っていきます。ただし、モデリングが間違っていれば計算結果も間違うことになりますので注意が必要です。
また、モデル化は簡単にすることも,、難しくすること出来ますので、実際に検討する時、どの特性が重要なのかを考え、出来るだけ簡単なモデルを用いて手計算などで見積もりを行い、詳細確認はシミュレーションを行えばよいでしょう。
重要なのはその時に必要な特性をどういったモデルを用いて簡単に検証を行えるかということです。今回はこの基本エミッタ接地等価回路のモデリングについて順に考えていきましょう。
2、トランジスタ回路のモデル化の基礎
エミッタ接地回路を用いて簡単な数式化を行いましょう。
トランジスタはベース・エミッタ・コレクタの3端子素子です。
エミッタ接地回路の場合、接地されているエミッタ端子以外の
各端子電圧の変化に対する電流の変化を順に調べていきます。
まずは覚えておくべきトランジスタの基本式を示してみます。
<覚えておくべき関係式>
Ib+Ic=Ie (トランジスタが飽和していない時)
Ib×β=Ic (順方向活性領域時)
Ie≒Ic=Is・exp(Vbe/VT)
Vbe=Vt・ln(I/nIs)
これらの式は↓など、さまざまな書籍でとりあげられているので
詳しくはそちらをご覧下さい。
では上記Fig.1の基本エミッタ接地回路の各電圧を
変化させた時の諸特性を数式化してみましょう。
3、ベース端子Vin(Vbe)を変化させた時の
各端子の電流について
Vbeの変化に対する各電流の変化は以下の式で表せます。
1、Vbeの変化に対するコレクタ電流の変化
ΔIc/ΔVbe = gm
2、Vbeの変化に対するエミッタ電流の変化
ΔVbe/ΔIe = re
3、Vbeの変化に対するベース電流の変化
ΔVbe/ΔIb = rπ
4、コレクタ端子(電源電圧)を変化させた時の
各端子の電流について
コレクタ電圧の変化に対する各電流の変化は以下の式で表せます。
1、Vceの変化に対するコレクタ電流の変化
ΔVce/ΔIc = ro
2、Vceの変化に対するベース電流の変化
基本的には変化しない
また、エミッタ端子はGNDに接地されているので変化させることが
出来ないため省略します。
3、計算用パラメータ
では順に計算用パラメータを考えていきましょう。
Ic=Is・exp(Vbe/VT)を多用します。
gmについて
gm=ΔIc/ΔVbe
=ΔIs・exp(Vbe/VT)/ΔVbe
=ΔIs・1/VT・exp(Vbe/VT)
=Ic/VT
VT=26mV(25.6mV)とすると
gm=Ic/0.026
reについて
re=ΔVbe/ΔIe
Ic=αIe (α=β/β+1)より
ΔIe/ΔVbe=1/α・ΔIc/ΔVbe=gm/αとなり
re=ΔVbe/ΔIe=α/gm
βが十分大きい時、つまりα=1の時
re≒1/gm
rπについて
rπ=ΔVbe/ΔIb
Ib=Ic/β=Is・exp(Vbe/VT)/β
ΔIb/ΔVbe=Is・exp(Vbe/VT)/VTβ
rπ=ΔVbe/ΔIb=VT/Ib=VTβ/Ic=β/gm
rπ=β/gm
roについて
ro=ΔVce/ΔIc
VAをアーリー電圧とするとIcと
ro=(VA+Vce)/Ic
4、まとめ
上記で求めた計算パラメータはFig.2の基本エミッタ接地等価回路で用いることが出来ます。
計算用パラメータ式
gm=Ic/VT≒Ic/0.026
re≒1/gm
rπ=β/gm≒β・re
ro=(VA+Vce)/Ic
Fig.2 基本エミッタ接地等価回路
以上トランジスタの小信号解析時に用いる式を順にみてきました。
この式は必ず用いるので絶対に覚えておいてください。
等価回路については↓の書籍で詳しく書かれています。
アナログ集積回路設計技術〈上〉
5、小信号特性を計算する場合の注意点
トランジスタが順方向活性領域にあること
理由は飽和領域ではIb×βIcが成り立たない
入力信号として数mV(<<26mV以下)レベルの微少電圧に対して有効
引き続き、多段エミッタ接地回路を勉強する!!←現在工事中
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