エミッタフォロアの基本DC特性、ゲイン約1倍、出力インピーダンス低い、バッファ回路、コレクタ接地など

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更新日 2020-01-13 | 作成日 2008-01-12

エミッタフォロア回路の基礎


1、エミッタフォロア回路の特徴

エミッタフォロア回路(コレクタ接地回路)はゲインが約1倍以下で増幅作用がない回路です。主な特徴としては、次段への電流供給能力があり、出力インピーダンスが低いのが特徴です。用途としては、オペアンプの出力回路、回路と回路を結合するバッファ回路、電圧レベルを変えたい場合のレベルシフト回路など幅広く使うことができます。

2、エミッタフォロア回路の使い方

エミッタフォロア回路を勉強する前に、実際、トランジスタ回路で回路と回路を接続するために知っておかなければいけない基本事項について考えていきましょう。それは各トランジスタ回路における入出力インピーダンスの関係です。

接地方式      入力インピーダンス     出力インピーダンス
エミッタ接地        高い              高い
エミッタフォロア      高い              低い
ベース接地         低い              高い

この表から、出力インピーダンスが低い回路はエミッタフォロア回路だけです。つまり、能力を持たせ、回路と回路をつなぐバッファの役割が出来るのはエミッタフォロア回路だけなのです。従って、アンプなど増幅器の出力段の構成としては以下の二通りの組み合わせにするのがよいのではないでしょうか?。

エミッタ接地+エミッタフォロア
        or
ベース接地+エミッタフォロア

このようにエミッタフォロア回路は、出力インピーダンスの高い回路の後段に接続し、出力インピーダンスを低くできるので、信号レベルを減衰せずに回路と回路が接続できるのです。

3、回路と回路接続のイメージ

一般的な回路の書籍では

「 回路を出力する場合、出来るだけ低インピーダンスで出力せよ」

「 回路の入力インピーダンスは出来るだけ高くせよ」

なぜこのようなことがよく言われるのでしょうか?

答えは、このように接続しなければ、信号レベルが減衰してしまうからです。これをイメージ的にとらえるために簡単な計算をしてみましょう。例えば下図のように抵抗RaとRbを接続し、電圧VINを与えてみます。

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Fig.1 回路と回路の接続時の簡易モデル

単純に抵抗分割されるので

VOUT=VIN×Rb/(Ra+Rb)

となります。簡単のために、具体的な数値で計算してみましょう。

例えば、Ra=100Ω、Rb=10Ωの時

    VOUT=VIN×10/(100+10)=0.091VIN

例えば、Ra=10Ω、Rb=100Ωの時

    VOUT=VIN×100/(10+100)=0.91VIN

つまり、Ra>>Rb の場合

    ⇒VOUTは極端に小さくなる

     Ra<<Rb の場合

    ⇒VOUTはさほど小さくならない

次に、この回路のRaが前段回路の出力インピーダンス、Rbが次段回路の入力インピーダンスだと考えるとどうなるでしょうか?

VINが前段回路の出力信号だとすると、Raが十分大きい場合0.091VINとなり、次段に伝わる信号が極端に減衰してしまいます。でもRaが十分小さい場合は0.91VINとなり次段に伝わる信号はさほど減少しなくなります。

以上の理由から、理想的にはRaが限りなく0で、Rbが限りなく∞であればVOUT=VIN×∞/(0+∞)=VINとなります。

これが一般に回路の出力インピーダンスは低くして、次段の回路の入力インピーダンスを高くせよと言われる理由です。

4、エミッタフォロア回路の基本構成

基本エミッタフォロア回路

Fig.2 エミッタフォロア基本回路

エミッタフォロア回路の基本的な回路構成をFig.2に示します。入力はトランジスタのベースで、出力はトランジスタのエミッタ側から取り出します。エミッタ端子からは通常、抵抗や定電流回路などバイアス回路が付加されます。コレクタ端子が電源電圧にAC接地されているので、別名、コレクタ接地回路と呼びます。

動作は簡単です。 前節で説明したように、トランジスタにエミッタ電流が流れている状態では、ベース端子からエミッタ端子間の電圧は約0.6V程度になります。エミッタフォロア回路でも同様です。VINに約0.6V以上(トランジスタがONする電圧)が与えられている場合、負荷Zがこのトランジスタに電流を流すので、VOUT端子には、ベース端子に印加した電圧から約0.6V(1Vbe)下がった電圧が出力されます。従ってゲインが約1倍で入力信号が出力されるのです。

また、エミッタ端子から出力信号を取り出すので、出力インピーダンスは下がります。出力インピーダンスの計算は システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術〈上〉 などが詳しいです。

5、シミュレーションしてみよう

エミッタ接地Sim回路

  (a)  回路

エミッタフォロアSim結果

 (b) 入力電圧対出力電圧
Fig.3  基本エミッタフォロアSim

条件:VCC=5V
    Vin:0v~5VでDCSweep)

<Sim結果の解説>

Fig.3(b)のデータで青色がVIN、赤色がVOUTです。VINに対して出力信号は約0.6V下がった電圧で追従しています。これがエミッタフォロア回路の基本動作です。また、入力信号は約0.6V以上で動作します。トランジスタは約0.6V以下ではカットオフし、エミッタ電流を流さないからです。また、出力信号は、VCC電圧より約0.6V下がった電圧、Fig.3の場合は約4.4Vまでしか出力出来ません。この理由は、回路的にVout≒Vin-1Vbe(約0.6V)の関係になるからです。また、ベース電圧がコレクタ電圧を越えることがないので、この条件でQ1は飽和(sat)しません。ただし、もしベース端子の電圧が電源電圧より高くなった場合、条件によっては飽和(sat)するかもしれないので、その場合は注意しましょう。

以上がエミッタフォロア回路の基本的なDC入出力特性の考え方です。

5、エミッタフォロア回路のまとめ

   1、入出力ゲインは約1倍以下
   2、入力インピーダンスが高い
   3、出力インピーダンスは低い
   4、回路と回路を結合するバッファとして使える
   5、ミラー効果の影響が少なく周波数特性がよい



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