カスコード回路のAC動作、ゲイン、周波数特性、計算、Simなど

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更新日 2020-01-13 | 作成日 2008-01-12

Bipolar0319_11.jpg

カスコード接続回路のAC特性


次は、カスコード接続回路の計算です。だんだん難しくなってきましたが、焦らずじっくり勉強していきましょう!!

1、カスコード回路の基本計算

cascade_basic.jpg
Fig.1 基本カスコード回路

この回路で実際にバイアス電圧やゲインなどを計算してみましょう。

(1) ベース端子の電圧計算

Vbase= 5V×5.96k/(5.96k+44.04k)=0.596v

(2) ゲインを求めてみます。

今回の回路はエミッタ側に抵抗がないので、エミッタ電流が決定できません。代わりに出力端子が電源電圧の1/2で振れるとすると仮定してコレクタ電流を決定しましょう。

    Ic=2.5v ÷ 20k =125uA

次に出力インピーダンスroを求め、
ゲインを計算します。
β=200 Va=100とすると

    roQ2=Va/Ic=100/125uA=800kΩ

ゲインの計算式はQ2側を見たインピーダンスは十分高いので

Av=-gmR2
  =-(125uA/0.026)×20kΩ
  = - 96.15(.39.66dB)

ここでは紙面の都合上、これらの式の導出はしませんが、
アナログ集積回路設計技術〈上〉 などが詳しいです。

(3) ハイパスフィルタのfp周波数

    fp=1/2πC1(R1//R3)
     =1/2π10u(5.96k//44.05k)
     =3.18Hz

カットオフ周波数が3.18Hzなので入力信号1kHzでは問題なく信号を通過出来ます。

2、Sin波入力時の応答

実際にFig.1の回路でSin波を入力し入出力特性を確認してみましょう。
カスコード回路Sim結果
Fig.2 Fig.1のSim結果

Vinは2.5Vを中心に1mV変化したSin波を入力しましたが、C1により信号のDC成分がカットされ、Vbaseの電位はトランジスタにバイアスされた約0.596Vの電圧を中心に約±1mVの振幅になっています。また、出力電圧は約2.5Vを中心に約±97mVに出力は増幅されました。以上より、ハイパスフィルタのおかげで入力信号のDCレベルに関係なく増幅器として動かすことが出来ました。

3、カスコード回路の周波数特性

次にFig.1の回路のAC解析(周波数解析)を行います。
カスコード回路AC特性Sim結果
Fig.3 Fig.1のAC解析Sim結果

Fig.3から分かりますように、3.42Hz以下の低周波ではハイパスフィルタのカットオフ以下なので周波数が低くなるにつれ信号レベルは減衰し、DC成分の振幅は小さくなっています。また、逆にカットオフ周波数以上では信号は減衰せずに出力されていることがわかります。また、更に高い周波数になると今度はトランジスタ回路のカットオフ周波数で出力信号は減衰していきます。これがFig.3の基本カスコード接続回路の周波数特性です。では次に先程計算した結果と上記シミュレーションの結果を比較してみましょう。

パラメータ        計算      Sim値
ゲイン          39.66dB     39.7dB
ハイパスフィルタfc  3.18Hz      3.42Hz

上記手計算ではベース電流の影響は無視したり、コレクタ電流も簡易計算しているので若干の誤差はありますが、かなり計算結果と近い値が出ました。簡易的な手計算でもここまでできるのです。

4、まとめと注意点

カスコード回路の基本的な動作を計算し、Simと比較してみました。この回路は頻繁に用いられる回路ではないですが、周波数特性を改善したいときやゲインや出力インピーダンスを増強したいときなど、威力を発揮する回路なので、ここで用いた考えかたは最低限理解しておきましょう。


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